ここ1,2年、飲食業や建設業を中心に人手不足が深刻になっており、最低賃金の値上も続いています。
例えば、今年の10月1日から東京の最低賃金は前年度比27円アップの985円となり、来年度は間違いなく1000円を超えるでしょう。
神奈川・埼玉・千葉・大阪・愛知も同じく27円のアップで、いずれも過去最高の引き上げ額です。
こうした動きは、マンション管理にも影響を及ぼします。
管理会社の中には、人件費アップを理由に、管理委託費の値上げを進めようという動きが見られるのです。
実際、管理会社から管理委託費の値上げを打診されている管理組合が出てきています。中には、値上げを認めてくれないなら、管理業務から撤退するといわれるケースもあるようです。
管理組合としてはどうすればいいのでしょうか。
管理会社のいうとおり、値上げを認めないと大変なことになる、と考える向きもあるでしょう。
しかし、本当に値上げが妥当なものなのかどうかは、きちんと確認する必要があると思います。
当社のこれまでの経験上、管理委託費の金額設定には大きく分けて2つのケースがあります。
ひとつは、業務ごとのコストを細かくみても業界平均並みかそれ以下というケース。これまで管理組合が管理委託費を細かくチェックし、管理会社としっかり交渉してきたマンションがあてはまります。
このケースでは、管理員やフロントマンの人件費の上昇をある程度は認めざるをえないでしょう。ただし、その場合も値上げの根拠や妥当性を検討した上で、です。
もうひとつは、もともと管理委託費が割高だったケース。実はこちらのほうが大部分を占めると思います。
なぜなら、ほとんどの分譲マンションでは、新築時に売主の不動産会社とその子会社である管理会社が、自分たちで管理委託費の金額を設定しています。複数の管理会社から見積もりを取って、市場価格に合わせるといったことはまったく行われていません。
こういうケースでは、単純に値上げを認める必要はないと思います。
管理会社の値上げ要請をきっかけに、本当にこれまでの金額が妥当だったのかどうか、確認してみるといいでしょう。
水ぶくれしている分を見直せば、値上げする必要はないかもしれません。
管理委託費は毎月、定額で管理会社に支払われるものです。そして、みなさんが支払う管理費の概ね7割前後を占めています。
そのため、管理委託費の値上げはそのまま、管理費の値上げに直結します。
世の中の人出不足や人件費の上昇が、そのまま管理委託費のアップにつながるわけではないことをよく理解していただいたいと思います。 |