こんにちは。SJS社長の廣田晃崇(ひろた てるたか)です。
弊社は14年前、業界初の管理組合向けコンサルティング会社としてスタートして以来、管理組合と居住者のみなさんの立場に立って、より良いマンション管理を実現するためのお手伝いをしてきました。
今回から、コンサルティングの現場で、私が感じたことや考えたことをお伝えしていきたいと思います。
タイトルは「夢はでっかく 根はふかく」としました。野田総理の「どじょう演説」で知られる相田みつおさんの詩の一節を拝借したものです。
私の夢は、マンション管理の世界をもっと透明で質の高いものにしていくこと。そのためには、マンション管理を巡る様々な現場の問題を深く掘り下げ、その根っこのところから解決していく必要があります。そうした私の思いをこのタイトルに託しました。
これから毎週更新していきますので、少しでもみなさんのご参考になれば幸いです。
さて1回目は、マンションにおける「アフターサービス」の意味を考えてみたいと思います。
分譲マンションに一生住み続けるという方がマンション居住者のほぼ半数を占めるようになり、「マンションは管理を買え」「マンションの資産価値は管理で決まる」ということがようやく認知されてきました。
しかし、実際にはまだ「大手有名企業の系列管理会社だから大丈夫」「修繕積立金がきちんと集められているから安心」といった誤解も少なくありません。当社が数年前から警鐘を鳴らしてきた、「アフター点検」もその典型例です。
「アフター点検」とは、「アフターサービス」のための「点検」という意味です。通常、新築マンションの売り主である不動産会社(デベロッパー)は、引き渡しから一定期間の間に発生した建物や設備の不具合について、無償で修理をする「アフターサービス」を付けています。
「アフターサービス」の内容は、デベロッパーにより多少異なりますが、業界団体でひな型をつくっていて、多くの会社はそれを参考にしています。
たとえば、下記の社団法人不動産協会「中高層住宅アフターサービス規準」は大手不動産会社が使っています。
http://www.fdk.or.jp/k_afterservice/index.html
「アフターサービス」というとつい、自動車や家電製品などのそれと同じものと思うかもしれません。しかし、分譲マンションの「アフターサービス」は意味が違うと私たちは考えています。
自動車や家電は、オートメーション化された工場で厳しい品質管理のもとつくられ、出荷時にも細かいチェックをしたうえで出荷されます。したがって、「アフターサービス」の対象になるのは、よほど運悪く、故障したりした場合に限られるでしょう。
しかし、分譲マンションなどの建築物は、日差しや雨風にさらされた屋外で、それもほとんど人手によってつくられる“一品もの”です。そのため、どうしても一定の不具合やミスが発生します。
たとえば、金具などの取り付け忘れ、塗装の塗りむら、外壁タイルなどの接着不良、コンクリートの白華現象などです。
鉄筋を入れ忘れたり、コンクリートの品質が悪いなど程度がひどいものは「欠陥マンション」になりますが、どんなに優秀な建設会社が丁寧に工事をしたとしても、多少の不具合やミスは避けられないのです(建築関係のお知り合いがいればぜひ、聞いてみてください)。
しかも、こうした不具合やミスは、工事終了後すぐには分からないことがあります。人が住んで毎日使われ、夏の暑さ、冬の寒さ、時には台風が来るなどの状況にさらされる中で表れてくるのです。
だから、そうした不具合やミスを補修する「アフターサービス」が大事になります。「アフターサービス」で細かいミスや不具合を補修することではじめて、新築マンションは売買契約で想定された状態になるといってもいいでしょう。
そうした状態にしてから、管理組合としてはその品質や資産価値を守るために管理を行っていくのです。
「マンションは管理を買え」「マンションの資産価値は管理で決まる」というように管理の重要性は認識されてきましたが、管理するマンションの当初の状態に問題があったのでは意味がありません。
新築マンションにとって、「アフターサービス」がどれほど重要か、ぜひ認識を新たにしていただければと思います。 |