タワーマンションの大規模修繕工事について考える
こんにちは。SJS社長の廣田晃崇(ひろたてるたか)です。
先日の日本経済新聞(6月12日)に、埼玉県川口市にある55階建て高さ185mのタワーマンション「エルザタワー55」で大規模修繕工事が始まったことが報じられていました。
このマンション、1998年に日本で最も高いマンション(当時)として建設され、大きな話題を呼びました。竣工から17年目の大規模修繕工事ということになります。
今回は、この記事に関連して、3点コメントしたいと思います。
第一に「やはりタワーマンションの工事費は高いな」ということです。
今回の大規模修繕工事の費用は12億円、総戸数650戸なので1戸当たり200万円弱になります。
中層で100戸くらいのマンションであれば一戸当たり100万円以内がひとつの目安と言われており、また戸数が多いほど1戸当たりでは割安になることも考え合わせると、かなり高いという印象です。
なぜ高くなるのか。
例えば、タワーマンションでは低層部以外は足場を掛けることができず、ゴンドラを使っての工事になります。そのため作業効率が悪く、工期がどうしても長くなります。
また、タワーマンションは中低層のマンションと比べて構造や設備がやや特殊で、その点でもコストアップになりがちです。
第二に「大規模修繕工事にあたって追加負担や管理組合としてのローンの借り入れがないのはりっぱだな」ということです。
報道によれば、「エルザタワー」では従来から、設備の管理や小規模な修繕工事の発注にあたり、一定額以上の場合は工事業者を公募で選ぶなどして支出の抑制に努めてきたため、修繕積立金のみで12億円の工事費を賄うことができたそうです。
「設備の管理」というのはおそらく、エレベーターや機械式駐車場などの点検業務のことでしょう。分譲当初はメーカー系に発注するのが一般的ですが、独立系に変更したりするとかなりコストが抑えられます。
「小規模な修繕工事の発注」でよくあるのは、管理会社にそのまま任せ、見積もりも管理会社の言う通りというケースです。これを公募にし、入札で工事業者を決めればやはり、コストを抑えられます。
第三に、この記事では触れられていませんが、「アフターサービスはちゃんと利用したのだろうか?」ということです。
新築マンションには通常、売主のアフターサービスがついており、部位ごとに引き渡しから2年とか10年など一定期間内に見つかった不具合は、無償で補修してもらえます。
アフターサービスを利用し、きちんと不具合を直しておけば、大規模修繕工事のコストが全然、違ってきます。
このマンションではどうだったのでしょうか。
ちなみに、不具合個所(特に共用部)の点検は管理会社任せにせず、管理組合が第三者の専門家のサポートを受けながら行うべきです。
タワーマンションは相変わらず人気が高く、2015年以降に完成予定の物件は全国で262棟、10万1450戸にもなるそうです(2015年3月末時点、不動産経済研究所調べ)。
これからタワーマンションを購入される方はぜひ、将来の大規模修繕工事について上記のような点を理解しておくようお勧めします。