専有部分と共用部分の区別を知っていますか?
分譲マンションの権利関係では、「専有部分」と「共用部分」の区別が非常に重要です。
これがあいまいだと、トラブルがあった場合の責任の所在や費用負担にも影響します。
占有部分については「上塗説」が有力
ところが、『区分所有法』では、専有部分と共用部分の境界を明確に規定しているわけではありません。
マンションの構造や設備は様々であり、最終的にはその部分の設置の仕方、用途、目的などから合理的に解釈するしかありません。おおざっぱにいって、コンクリートの床や壁、天井で区切られた各住戸の内側が「専有部分」、それ以外が「共用部分」です。
しかし、実際には微妙な部分、どちらかはっきりしない部分もあります。
従来から、専有部分の考え方には「内壁説」「壁心説」「上塗説(折衷説)」の3つがあります。
このうち、内壁説では壁などの表面まで全て共用部分となり、所有者は壁紙の張替えも勝手にできません。
また、壁心説では、コンクリートの壁にボルトなどを勝手に打ち込めることになります。
そこで現在は、上塗説が有力です。
共用部分では「専用使用権」にも注意
また、共用部分には、「法定共用部分」と「規約共用部分」の区別があります。
「法定共用部分」とは、階段、エレベーター、構造躯体(柱や外壁など)のように、構造の点からも用途の点からも当然、共用部分とされる部分です。
これに対し、「規約共用部分」とは、集会室、管理事務所など、各住戸と同じようにコンクリートの床、壁、天井で区切られており、本来は専有部分になるところを管理規約によって共用部分としたものです。
共用部分でもうひとつ注意すべきなのが、「専用使用権」が設定された部分です。これは、各住戸のバルコニーや専用庭などのように、全員の共有でありながら、特定の区分所有者のみが使えるようにしたものです。専用使用権が設定された共用部分は、他の区分所有者が勝手に立ち入ったり、使用したりすることはできません。
このように、専有部分と共用部分の区別は意外に難しく、何かトラブルが発生した場合、誰がどのように責任を負うかでもめることになりかねません。
例外的に、配管や配線の故障で被害が発生した場合、その原因箇所が特定できなければ、共用部分の問題と推定するという規定が『区分所有法』におかれています。
そのため、実際にはあらかじめ管理規約で細かく決めておくことが重要になるのです。
「マンション標準管理規約」を参考に
少し細かい話になりますが、国土交通省が公表している『マンション標準管理規約』では、専有部分は「住戸番号を付した住戸とする」とし、さらに共用部分との境界について次のように規定しています。
- 天井、床および壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする
- 玄関扉は、鍵および内部塗装部分を専有部分とする
- 窓枠およびガラスは、専有部分に含まれない(つまり共用部分)
これは、基本的に「上塗説」を採用したものです。
初めて聞く人にはやや違和感があるかもしれませんが、各住戸の玄関扉やサッシの窓枠、ガラスは共用部分ということになり、勝手に手を加えたりすることはできません。
例外的に、玄関扉の鍵と室内側の塗装は専有部分なので、所有者の判断で交換や塗替えが可能ということになります。
『マンション標準管理規約』ではまた、機械室、パイプスペース、メーターボックスやインターネット通信設備、ケーブルテレビ設備、オートロック設備などについては、専有部分と共用部分に分けて考えることは合理的ではなく、またメンテナンスの責任などの点から、住戸内に設けられているものも含めて全体が共用部分とされています。
これに対して、給排水管は接合部分が多く、メンテナンス費用や損害発生の場合の責任も比較的明確にできるということで、『マンション標準管理規約』では、専有部分と共用部分に分けています。
具体的に、給水管についてはメーターボックス内にある本管から量水メーターまでが共用部分、メーターから先の各蛇口までが専有部分です。
排水管については、パイプスペースにある竪管から各住戸の横引き管の継手までが共用部分、その先(横引き管)が専有部分となります。
なお、築年の古いマンションの中には、排水管(横引き管)が床コンクリートを貫通し、下の階の天井裏を通っているケースがあります。
こういう場合は共用部分とする判断が、最近の最高裁判例で示されています。
●専有部分についての考え方
概要
|
問題点
|
|
内壁説
|
|
|
壁心説
|
|
|
折衷説
(上塗り説) |
|
●専有部分についての考え方
専有部分
|
共有部分
|
● 専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある以外のもの |
<建物の部分>
<建物の付属設備>
<その他>
●それらの付属物 |