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マンション修繕工事で談合の疑い – 問題の構図と対応策を考える

株式会社ソーシャルジャジメントシステムSJSコラム マンション修繕工事で談合の疑い – 問題の構図と対応策を考える

マンション修繕工事で談合の疑い – 問題の構図と対応策を考える

はじめに

マスコミ各社の報道によれば、公正取引委員会は2025年3月4日、関東地域のマンションの大規模修繕工事で談合を繰り返したとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで修繕工事会社約20社に立ち入り検査を行いました。
弊社も一級建築士事務所として多くの顧問先(管理組合)において、大規模修繕工事の前提となる建物調査診断をはじめ、工事会社の公募と選定、工事の設計監理などのサポートを行ってきました。弊社は今回の公正取引委員会の立ち入り検査とはまったく無関係であることはもちろん、設立当初からこうしたマンション管理業界の悪しき慣習と体質に微力ながら風穴を開けるべく事業を行ってきたことを改めてお伝えしたいと思います。

以前から指摘されてきた問題

公正取引委員会が問題視しているのは、分譲マンションの大規模修繕工事における工事会社の選定における談合です。
マンション管理業界においては以前から、不透明なリベートやキックバックなどの存在が指摘されており、大規模修繕工事については2017年に国土交通省が建設コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等について、注意喚起を行いました。その中で、次のような事例を紹介しています。

最も安価な見積金額を提示したコンサルタントに業務を依頼したが、実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントの職員ではなく、施工会社の社員であったことが発覚した。コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送られた。

当時、この問題はテレビや雑誌などで大きく取り上げられましたが、その後も状況が変わらないことから今回、公正取引委員会がメスを入れたのだと思われます。

談合を巡る構図

今回、立ち入り検査を受けた事業者の筆頭に長谷工リフォームがあげられていますが、同社は新築マンションの施工実績では業界ナンバー1である長谷工の関連会社であり、その他の企業も大規模修繕工事において一定の実績を持つ企業が多い印象です。
こうした会社がどのような構図で談合を行っていたのでしょうか。
大規模修繕工事では、特定の施工業者(管理会社や工事会社等)に初めからすべて任せる「責任施工方式」と、施工業者とは別に調査診断や工事会社の選定、工事の設計監理などを行うコンサルタント(管理会社や設計事務所等)を入れる「設計監理方式」があり、いまは「設計監理方式」が主流になっています。
問題は、コンサルタントの選び方です。複数社から見積りを取るのはよいのですが、中には極端な安値で受注しようとするコンサルタントがいます。こうしたコンサルタントが、施工業者の選定において特定の工事会社だけを参加させ、受注先や金額をコントロールしてキックバックを受け取るのです。
「そんなことができるのか」と思われるかもしれませんが、ひとつは施工業者を業界紙などで公募する際、資本金や売上高、業歴などに恣意的なハードルを設けます。今回、公正取引委員会が立ち入り検査した修繕工事業者に規模が大きいところや老舗が多いのはこのことと関連があると思われます。また、施工業者の選定においては、参加業者の間であまり見積もり金額に差がつかないように、それでいて受注予定の施工業者が最も安くなるよう調整します。発注側として、金額に大きな差があると不安になるのを避けつつ、うまく誘導しているのです。

公平公正な競争こそ大事

今回の報道に接し、自分たちのマンションの大規模修繕工事をどのように行えばいいのか不安を感じた方も多いでしょう。
業界の体質がすぐに変わるとは思えませんが、マンションの修繕工事は新築工事とは内容や材料、職人などがまったく別で、名前が知られていなくても適正価格で質の高い工事を行う工事会社は探せばあります。また、談合に関わったような工事会社でも技術力などが高いところも少なくありません。
現実的対応策は、「設計監理方式」を前提としながら、公平公正な条件で複数の工事会社を競争させることであり、そうしたプロセスをサポートできるコンサルタントを選ぶことです。
そして、信頼のおけるコンサルタント(設計監理会社)を選定するには、「施工会社選定をどの様な方法で実施するのか」「どのように公平公正な競争を実現するのか」を問いかけ、これに対する回答や具体的な提案内容を見極めることが最も重要です。