マンションによっては壁に亀裂が入りやすい不具合が隠されていることがあります
明けましておめでとうございます。
SJS社長の廣田晃崇(ひろた てるたか)です。
本年も「マンション管理ブログ」をよろしくお願いいたします。
前回は、外壁タイルの「浮き」の問題を取り上げました。
外壁のタイルについては「浮き」のほか、「割れ」や「欠け」が発生することもあります。
特に、注意しなければならないのは、それほど大きな地震でなくても、あるいは特に変わったこともないのに、コンクリートにひび割れが起こり、そのため外壁表面のタイルまで割れてしまう場合です。
もちろんいろいろなケースがあり、一概に「こうだ」とは言えませんが、コンクリートにひび割れが起こる原因のひとつとして、「スリット」や「誘発目地」が設計通り設けられていないことが挙げられます。
多くのマンションでは、一部の耐力壁を除くと、外壁は建物を支えたり、地震に耐えたりする役目が期待されていない「雑壁(ざつかべ)」と呼ばれるものです。
「雑壁」には設計上、ある程度大きな地震が来たとき、揺れのエネルギーを重要な躯体部分から逃がすための「スリット」(切れ目)や「誘発目地」(細長い凹み)が設けられます。
具体的に、「スリット」は壁と柱や梁、床が接するところに設け、揺れのエネルギーが柱や梁に集中しないようにします。
「誘発目地」は壁の縦方向、横方向それぞれに一定間隔で設け、ひび割れをそこに集中させることで、あちこち不規則にひび割れるのを防ぎます。
いずれも、大地震の際の被害をなるべく抑え、被害が発生しても比較的簡単に補修できるようにしておくための工夫なのです。
もし、「スリット」や「誘発目地」の位置が設計と異なっていたり、あるいはなかったりしたら、外壁のあちこちに不規則にひび割れが起こったり、小さな地震でも大きな損傷が発生したりします。
こうした「スリット」や「誘発目地」の不具合も、「アフター点検」で発見すれば補修を要求することができるのです。
弊社の一級建築士がサポートしたあるマンションでは、「スリット」の一部が壁に入っていなかったため、建設会社と折衝の上、後から「スリット」を設ける工事を行いました。
「アフター点検」にはぜひ、専門家の経験と知恵を活用すべきだと思います。