買ったマンションに不具合があったらどうする?(1) – 繰り返される欠陥マンション問題 –
2023年3月、三重県志摩市のリゾートマンションの管理組合が、建物の欠陥を理由として施工会社と売主に対し損害賠償を求める訴えを起こしました。これまで欠陥マンション問題は繰り返し発覚しており、今後も起こる可能性は否定できません。欠陥マンション問題とはどういうものか、なぜ繰り返し発生するのか、もし自分のマンションで起こったらどうしたらいいのか。これから数回に分けて取り上げます。
今回、問題が明らかになったのは、いまから26年前の1997年に竣工した鉄筋コンクリート造14階建て、全120戸のリゾートマンションです。売主は大和ハウス工業、施工は現在の三井住友建設です。各社の報道によると、次のような経緯をたどっています。
- 1997年11月の竣工から4、5年ほど経って廊下やベランダ(の天井)からコンクリートの表面が剥がれ落ちる現象が相次いだ。
- 施工会社は施工不良を認め、2010年(竣工から13年後)に一度、無償で補修を行った。
- 3年ほど前から別の場所でもコンクリートが剥がれ落ちるのが確認され始めた。2021年にはある住戸のベランダの天井から重さ約1.5キロのコンクリートの塊が落下した。
- 2022年4月、2社は住民説明会を開き、再度の補修工事の方法・工期などを示した。
- 2022年6月、施工会社は修繕の調査を進めたが、現場事務所を残して作業員を撤収させた。
- 2022年9月、管理会社に施工会社から文書が届き、法的な責任は否定しつつ、合意に基づく範囲に限り無償で修繕するとの立場を示した。
- 2023年3月、管理組合では売主と施工会社に対し、今後必要となる3回の補修工事費用2億8900万円の損害賠償を求めて津地裁に提訴した。
正確なところは分かりませんが、おおよその事実関係(推測を含む)と論点を整理しておきます。
<事実関係>
- コンクリートのかぶり厚さが不足する施工不良があった(施工会社も認めている)。
- そのことが原因で廊下やベランダの天井からコンクリート片が落下している。
- 柱や梁、耐力壁など構造躯体でもコンクリートのかぶり厚さの不足があるかどうかは不明である。
- 管理組合が請求しているのは、マンションの耐用年数を45~50年として今後3回の修繕工事(12年周期として今回26年目、38年目、50年目)において、かぶり厚さ不足に対応した工事費であると考えられる。
<論点>
①施工会社の民法上の不法行為責任について
②売主、施工会社との間での合意の有無について
①の点については、不法行為責任ということで工事に不手際があった施工会社が対象となります。
施工会社側はこの点について、仮に不法行為責任があったとしても旧民法の「除斥期間(20年)」が過ぎているので消滅していると主張しているようです。
この点を争うとなると裁判は長引く可能性があります。
②については、売主と施工会社の2社が過去に施工不良を認めて修繕工事を行っており、また今回も住民説明会を開いて調査を始めていたことなどから、無償で修繕工事を行う合意が存在することを管理組合側は主張しているようです。
当事者間で合意があったのに修繕工事をしない(する気がない)から金銭(損害賠償)を求めるということです。
提訴後の記者会見で、管理組合の理事長は「いったんは原状回復で合意したのに、住友側は昨年6月に撤収した。不誠実だ」と憤ったとされます。
一方、マスコミの取材に対し、施工会社の広報担当者は「作業員引き上げは組合側にマンションへの立ち入りを禁じられたためで、現場事務所は今もある。当方は誠意を持って対応しており提訴は残念だ」とコメントしたそうです。
別の報道では、施工会社は「今後生じた不具合については責任(※おそらく不法行為責任)を負わない」とした上で、条件付きでの補修を行う合意書案を送付したものの、管理組合は認めなかったそうです。
管理組合と施工会社の間でこれまでどのような交渉が行われたのか、どのような関係だったのか詳しいことは不明なのでなんともいえませんが、一般論でいうとマンションの所有者、管理組合にとっては少しでも早く不具合を修繕し、安心して住み続けられる状態にすることが大切です。
今回、マスコミで大きく取り上げられたことは、売主や施工会社に対するプレッシャーになるのは間違いありません。裁判の行方もありますが、早く何らかの合意(和解)に至るのが望ましいと思われます。