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理事会サポートの現場から(4) 役員選任方法の課題と対策

株式会社ソーシャルジャジメントシステムマンション管理の基礎知識 理事会サポートの現場から(4) 役員選任方法の課題と対策

理事会サポートの現場から(4) 役員選任方法の課題と対策

分譲マンションの管理組合向けコンサルティングのパイオニアであるソーシャルジャジメントシステム。
これまで20年以上、多くの管理組合とその理事会をサポートしてきました。
私たちが実際に行っているサポート事例をご紹介します。

管理組合の活動の中心になるのが、理事や監事といった「役員」です。毎年の総会では通常、次期の役員についての議案が上程され、承認されます。
仕組みとしては、「立候補」制を前提としつつ「輪番制」を採用している管理組合が多いと思います。
「輪番制」とは、フロアごとや複数棟がある場合は棟ごとなどに区分所有者をいくつかのグループに分け、各グループで予め一定期間の輪番(順番)を決めておき、それに従って役員を選出する方法です。
この「輪番制」においてよく相談を受けるのが次のようなケースです。ポイントになるのは「何が公平か」ということです。

1.輪番表の作成方法

輪番表の作成方法としては、グループごとに住戸番号の順に割り振るのが基本となります。ポイントは、区分所有者(人)ではなく住戸で順番を決めておくことです。こうすると売買などで区分所有者が変わっても変更の必要がありません。
ただし、住戸の居住者が賃借人になったり(区分所有者が外部に居住)、輪番がまわってきた際に区分所有者が病気やケガ、高齢などの理由で役員を務めることが難しい場合もあります。
その際の取扱をどうするかが問題になります。
そもそも管理組合の役員の条件は通常、管理規約で定められています。以前は「現に居住する組合員のうちから」としているケースが多かったのですが、国土交通省の標準管理規約では10年ほど前に「組合員から」と変更されました。外部に居住している区分所有者もなれる(なってもらう)とするためです。賃貸住戸が多いマンションでは、外部居住の区分所有者も輪番表に入ってもらえるよう管理規約の変更を検討したほうがいいでしょう。ただし、マンションの近くに居住している場合はいいですが、遠方のケースなどは難しくなります。
これは病気がケガ、高齢などのケースも同じです。
予め「●歳以上は役員を辞退できる」など役員免除の条件を決めておくという方法もありますが、「どこまで認めるか」で揉めることになりかねません。実際には、輪番が回ってきた際の事情によって理事会で判断するとするのが現実的かと思います。
もう一点、役員免除の際に輪番表をどう見直すかという問題もあります。役員免除のケースは次の輪番の住戸が繰り上がり、役員免除となった住戸は輪番表の最後尾に回しつつ、役員就任可能になった際に優先的に繰り上げるとすることが考えられます。
なお、輪番表とは別に役員に立候補する区分所有者が出てきたときも問題です。その場合、役員数をその期だけ増やすか(規約変更ではなく総会決議で対応)、あるいは立候補した区分所有者の属するグループ内で立候補者の住戸を繰り上げるという方法も考えられます。

2.輪番が回ってきても辞退する人への対応 

病気やケガ、高齢などの場合は致し方ありませんが、時として特段の理由がなくやれない、やりたくないというケースがあります。これを認めるとマンション管理における公平性に疑問がつきます。
まずはなぜ「やれない」「やりたくない」のかの理由をよく確認することです。高齢であっても他の役員がサポートするという条件でやってもらえることがあります。仕事で忙しいといった場合は、理事会への参加方法の柔軟化や多様化(web化、持ち回りなど)を検討することも有効です。
さらに、就任拒否の場合の協力金制度を設けたり、役員へ一定の報酬を付与することも考えられます。

3.期中に役員が欠けたりした場合の対応

引っ越しなどで期中に役員が欠けた場合どうするかもよくある問題です。
この場合、理事会で後任(残り任期の役員)を選任できるよう規約変更しておくのがお勧めです。また、予め総会で輪番表で次の住戸を補欠として上程し、承認を取っておくという方法も考えられます。
もうひとつ、滞納者が輪番で役員候補となる場合の取扱いが問題になることがあります。この場合、 ①基本的には解消するまで輪番から外す、②役員に就任しても滞納者対応の審議に一切加われない運用を総会で決める、といった対応を検討するとよいでしょう。

役員の確保が難しくなる管理組合は増える傾向にあります。それぞれの状況、事情に合わせて柔軟に対応していくしかないと思います。