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マンション管理の新しい認定制度、評価制度は役に立つのか?

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マンション管理の新しい認定制度、評価制度は役に立つのか?

この4月1日より、マンション管理についての新しい制度が2つ、スタートしました。
ひとつは国と自治体による「マンション管理計画認定制度」。もうひとつは、マンション管理の業界団体であるマンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」です。
これらの新しい評価制度はどのくらい役に立つのか、考えてみます。

●今後、ますます高まるマンション管理の重要性

国土交通省によると、2020年末時点で全国には675.3万戸(推計)の分譲マンションがあるとされます。そのうち築40年を超えるものは103.3万戸、約15%を占めますが、それが10年後には231.9万戸、20年後には404.6万戸へ、ほぼ倍々のペースで増えていく見込みです。

図表 分譲マンションのストック戸数

※国土交通省資料
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001410084.pdf

一方、これまでに建替えられた分譲マンションは250件ほどにすぎず、今後もそう簡単には増えそうにありません。

図表 マンション建替えの実施状況

※国土交通省資料
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001411083.pdf

いまや分譲マンションは都市部における中心的な住まいです。世帯人数はいま2.3人ほどですから、単純計算では1500万人を超える人がマンションで暮らしています。

それがどんどん高齢化し、しかも建て替えが難しいとなると、どうしたらいいのでしょうか。
おそらく、選択肢はひとつしかありません。建物や設備をきちんと維持・管理し、できるだけ長く住み続けることです。
幸いマンションの構造躯体は鉄筋コンクリートでできており、防水対策やひび割れ補修などをきちんと行えば50年以上は十分、持つといわれます。給排水管をはじめとする設備も定期的なメンテナンスと適切なタイミングでの交換を行えば、一定の費用はかかりますが使い続けることに問題はありません。
そのためにも分譲マンションの管理の重要性は今後、ますます高まっていくのは間違いありません。

●法律に基づく「認定制度」と業界団体による「評価制度」

こうした時代の流れを踏まえて、2022年4月1日からマンション管理に関する新しい制度が2つスタートしました。

ひとつは、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理計画認定制度」です。これは、分譲マンションの管理計画が適切かどうかを自治体が認定しようというもので、それぞれのマンションの管理状況を可視化することで管理組合の対応を促し、また適切に管理されているマンションが中古市場で評価されることなどを目指しています。
認定を受けるには法律が定める16項目と各自治体が独自に定める項目をクリアすることが必要です。
認定された分譲マンションについては、住宅金融支援機構の【フラット35】及びマンション居応用部分リフォーム融資の金利が優遇される措置も設けられています。

図表 板橋区のホームページ

※https://www.city.itabashi.tokyo.jp/tetsuduki/sumai/apartment/1038593/1038463.html

もうひとつは、マンション管理の業界団体である一般社団法人マンション管理業協会が運営する「マンション管理適正評価制度」です。こちらも分譲マンションの管理の状態について、全国共通の評価基準を策定し、良質な管理が市場で評価されるようにしようというものです。
こちらは、マンションの管理状態を5つのカテゴリーに分類し、ソフト面とハード面の両方から30項目について評価し、100点満点で点数を付けます。そして、各項目の点数を足した合計点により6段階(★が0~5つ)の等級が付けられます。

★★★★★: 90~100点  (特に優れている)
★★★★☆: 70~ 89点   (優れている)
★★★☆☆: 50~ 69点   (良好)
★★☆☆☆: 20~ 49点   (改善が必要)
★☆☆☆☆:   1~ 19点   (管理に問題あるが、情報開示あり)
☆☆☆☆☆:     0点以下  (管理不全の疑いあり)

図表 マンション管理業協会のホームページ

※http://www.kanrikyo.or.jp/evaluation/index.html

なお、「管理計画認定制度」と「適正評価制度」の関係ですが、マンション管理業協会によれば、評価項目や有効期間、申請手続きにおいて後者が前者を大きくカバーしているとしています。そして、マンション管理業協会を窓口にすると、両方の制度の申請から認定までワンストップで行えるとしています。

●普通のマンションならクリアできて当たり前

こうした説明を聞くと、2つの制度によって分譲マンションの管理が大きく変わると思う人もいるかもしれません。
特に、マンション管理業協会の「管理適正評価制度」で★5つの評価を受ければ中古市場での取引価格もアップするのではと考えるかもしれません。
しかし、実際には期待外れの可能性が少なくないように感じます。

まず、自治体による「管理計画認定制度」はまだほとんどスタートしていません。
なぜなら、前提となる「マンション管理適正化推進計画」を策定している自治体が少ないからです。国土交通省の調査によると、2022年2月中旬時点で4月1日までにこの計画を作成すると回答したのは全体の5%程度に過ぎません。例えば、東京都内で4月1日から制度がスタートしたのは、板橋区、八王子市、小金井市、府中市の4自治体に過ぎません。
また、計画を作成する意向を持っている自治体も国土交通省の調査では30%弱に過ぎず、しかも「24年度以降」などかなり先になるところが結構あります。

マンション管理業協会の「適正評価制度」についても、登録の申請受付は始まったようですが、管理会社の担当者(フロント)から管理組合に対する案内などはまだあまり行われていないようです。
なぜなら、登録申請の前には管理会社の事前評価や管理組合の提案が行われます。現場の担当者(フロント)にしてみれば、ただでさえ多くの物件(管理組合)を担当して手が回らない中、負担が増すことになりますし、それまでの自分の業務遂行における不備を指摘されるおそれもあるように感じます。

さらにいえば、それぞれの制度の認定項目、評価項目をよく見てみると、普通のマンションならクリアできて当たり前のものが多いようです。
もともとしっかり管理が行われているマンションにとっては「いまさら」という感じでしょうし、逆に認定されなかったり評価が低かったりするマンションはすでにかなり管理に問題があるはずで、これらの制度をきっかけに状況が改善されるとはあまり思えません。

もちろん、マンション管理の重要性について社会的な関心を高め、多くの管理組合がより積極的に活動するきっかけになればいいと思います。
これらの新しい制度が今後、どのように運用され、多くの管理組合に受け入れられていくのか、私たちも注目していきたいと考えています。